最高裁判所第一小法廷 昭和39年(オ)327号 判決 1965年11月25日
上告人
尾崎商事株式会社
右代表者
尾崎芳郎
右訴訟代理人支配人
藤井立身
被上告人
株式会社広島銀行
右代表者
橋本龍一
右訴訟代理人
三宅清
高橋一次
主文
原判決を破棄し、第一審判決を取り消す。
本件訴を却下する。
訴訟費用は、第一、二、三審を通じ上告人の負担とする。
理由
本件上告理由は、別紙上告代理人藤井立身の上告理由書記載のとおりである。
しかし、職権を以て案ずるに、上告人の本訴請求は、被上告人が原判示定期預金債権の弁済のためなした供託は、右債権の弁済を受けるべき者が上告人であることが明らかであるにもかかわらず債権者を確知できない場合にあたるとしてなされたものであるから、無効であるのに、被上告人がこれを有効と主張して、上告人の右定期預金債権支払の請求に応じないため、右供託の無効確認を求めるというにある。ところで、およそ確認訴訟は、特に定めのないかぎり、現在の権利または法律関係の確認を求める場合にのみ許されるべきものであるところ、本訴請求は、上告人の前記主張するところに照らしても、過去になされた供託が無効であることの確認を求めるものであつて、過去の法律関係の確認を求める趣旨を出でるものではない。上告人としては、よろしく右供託が無効である場合における現在の権利または法律関係について直接確認または給付を求めるべきものであると解される。その他記録に徴しても、上告人が本件供託の無効確認を求める法律上の利益を有するものと認められる資料を見出だし難い。然りとすれば、本訴は確認の利益を欠くものというの外なく、本件につき実体的判断をなし本訴請求を理由なしとしてこれを棄却した原判決および第一審判決は、違法であるから、前記上告理由に対する判断をまつまでもなく、破棄、取消を免れない。
よつて、民訴法四〇八条、三九六条、三八六条により、原判決を破棄し、第一審判決を取り消したうえ、本件訴を却下することとし、訴訟費用の負担につき、同法六九条、九六条を適用して、主文のとおり判決する。
この判決は、全裁判官一致の意見によるものである。(入江俊郎 長部謹吾 松田二郎 岩田誠)